SEA100

Japanese
Interviews
『ISHIN STARTUP SUMMIT 2017』連動特別企画 連続インタビュー第1回

ハードとソフトそして“ハート” 3つを兼ね備えた起業家育成を目指す

シンガポール経営大学リー・コン・チアン経営学院
学部長 ジェリー・ジョージ
ジェリー・ジョージ

2017年12月6日に開催される『ISHIN STARTUP SUMMIT 2017』。東南アジアのスタートアップと日本企業のリアルな出会いをサポートするイベントです。本サイトを運営するイシンシンガポール株式会社と、シンガポール経営大学リー・コン・チアン経営学院(以下、SMU LKCSB※)のイノベーション&アントレプレナーシップ研究所(以下、IIE)とが共催します。そこでイベントに先駆け、2回にわたってSMU LKCSB、そしてIIEの責任者にインタビュー。日本のスタートアップ・エコシステムにかかわる人たちにメッセージを寄せてもらいました。

※SMU LKCSB
2000年に設立された当初の学生数は300人程だったが、現在では3,000人を超える学部生と1,000人もの大学院生を擁する、アジアの中でダイナミックな成長を遂げているビジネススクール。現在、SMU LKCSBは学士号からMBA、博士号までをカバーするプログラムを提供。こうしたプログラムの多くが、英国フィナンシャル・タイムズ紙の国際ランキングで第3位に選ばれた金融修士号をはじめ、国際的に高い評価を得ている。

第1回目はSMU LKCSBのジェリー・ジョージ学部長にインタビュー。SMU LKCSBがなぜ他の大学と大きく異なっているのか、お話を伺いました。

―ジェリー学部長、この度はインタビューにご協力いただき、ありがとうございます。はじめに、SMUはなぜ他の大学と大きく異なるのか、お聞かせください。

私たちは今年、開学17年目を迎えたばかりの大変、若い大学です。設立時、私たちは新しい世代の起業家精神に満ちた大学にしたいと考えました。そのためには、学習および教育に取り組む上で、より高い柔軟性を持つ必要がありました。イギリス型ではなくアメリカ型の教育モデルを採用したのも、その理由からです。この考え方は刷り込み効果となり、教育に対して企業家的考えを常に持つようになり、結果として時勢に遅れることなく柔軟に対応できる人間が育つのです。

―なるほど、SMUは学習および教育に対する取り組み方が他の大学と異なり、より柔軟であるわけですね。では、カリキュラム設計についてはどのように異なるのでしょうか。

私たちは学生が包括的かつ柔軟に学ぶことを重視し、講義方法については双方向型ならびに事例ベースで行うことにしました。教室の規模については、講義の中でより多くの対話と議論を交わせるように、学生数は45人から50人程度です。

また、会計・経済・ビジネスといった学部に関係なく、全学生を対象とする広範な1年次カリキュラムを作成しました。2年次については、ビジネス必修科目と選択科目、3年次ならびに4年次は専門科目などが組まれています。

―カリキュラムの設計だけではなく、教室の規模など細部にわたって検討を重ねたということですね。そうした検討を経て実現した教育を受けると、学生一人ひとりはどのような資質を得るのでしょうか。また、どのようにしてこうした資質の育成に取り組んでいるのでしょうか。

SMUでは学生にハードスキル(技術的スキル)とソフトスキル(コミュニケーションスキル)、さらには“ハートスキル(リーダーシップ、倫理観、奉仕活動への意欲)”を兼ね備えた卒業生になってもらいたいと思っています。

学生にさまざまな産業課題に触れてもらうため、SMUでは「SMU-Xプログラム」を設けています。このプログラムでは、学生が課題解決型学習を通して産業課題に取り組みます。私たちは、学生がSMUを卒業するまでに産業課題を理解することを極めて重要と考え、産業界のパートナーの協力を得て、こうした産業課題の情報を入手しています。

また、SMUではどの学生も柔軟にスケジュールを組めるように配慮しており、多くの学生が月曜と火曜に授業を受け、水曜から金曜はインターンシップで働いています。事実、学生の大半が卒業までに3ヵ所以上でインターンシップを経験し、9割の学生が卒業から3ヵ月以内に就職しています。

もう一つ、学生が体験するものにSMU教育の根幹とも言える「100%グローバル」があります。学生は海外交流プログラムや海外での研究活動を通じて、それぞれ国際感覚を養います。実際にSMUの7割の学生が海外交流プログラムに参加しており、またキャンパスには常に400名程の留学生がいます。このように私たちは世界を学生にとって身近なものとし、教室でもグローバルな環境を学生に提供しています。

さらに、SMUの学生は卒業までに必ず80時間の奉仕活動を行うことになっています。シンガポール国内で奉仕活動に携わる学生が多いですが、ネパール、アフリカ、インド、中国などの海外諸国で行う学生も数多くいます。

―SMUの学生はとてもホリスティック(全人格的)な教育を受け、刺激に満ちた学生生活を送るのですね。では、別の観点からお聞きします。世界的に見て、多くの大学が教育の核として、起業家精神の養成に焦点を当てているように思います。起業家精神の養成についてSMUではどのように取り組んでいますか。

SMUでは常に、いくつかの異なるレベルにおいて、教育とベンチャー起業を密接に結びつける試みを行っています。ビジネススクールではイーグルスクラブ、SMUベンチャーズといった取り組みがすでに存在します。また研究機関としてはIIEがありますが、IIEはこれまでに170を超えるスタートアップを支援し、ベンチャー基金に2500万ドルを集めています。

昨年、SMUはビジネス学部に起業家専攻を開設し、最終年次には起業家実習コースを設けました。このコースの目的は起業を目指す学生に対し、助言および10万ドルを上限とする補助金または資金を提供することにより、学生のスタートアップの市場参加を支援するものです。

―SMUのエコシステムのあらゆるレベルにおいて起業家精神が培われていく。とても素晴らしいですね。SMUからさらに多くの起業家が誕生し、世界を変えていくことを楽しみにしています。では、これまでSMUの卒業生が進んだ道で興味深い例があればお聞かせください。

SMUの卒業生は総じて幅広い分野でさまざまなことをしていると言えるでしょう。起業して、香港で新規株式公開(IPO)を果たした卒業生もいます。また、多くの卒業生がさまざまな銀行で部門を率いる立場になっている一方、社会でリーダー的役割を担っている卒業生もいます。SMUでは学生が適応性を身に付けることを重視しているので、学生がどの道を選択しても、成功できるのです。

―とても興味深いですね。きっとハードスキルとソフトスキル、そしてハートスキルを兼ね備える教育をしているからこそでしょう。これまでお話を伺って、わずか17年の間でSMUが成し遂げた数々の実績について、大変素晴らしいと感じました。今後はいかがでしょうか。SMUが描いている未来像についてお聞かせください。

私たちは2020年までに、全プログラムが世界のトップ30に入ることを目標にしています。つまり、どのコースを学生が選んだとしても、世界のトップ30に入るビジネススクールを学生が体験できることを目指しています。これを私たちは“PG2020計画”と呼んでいます。

―とても意欲的な目標に聞こえます。PG2020計画とその実現のための取り組みについて、詳しく説明していただけますか。

PG2020計画を支える柱はSMU教授陣の質の高さにあります。彼らの9割が世界トップレベルの教育機関で訓練を受けています。ハイレベルな教授陣を擁していればこそ、世界のトップ30に入るプログラムをSMUのすべてのコースに提供することが可能になるのです。ハイレベルな教授陣がそろわなければ、いくらハードウェアを整備しても、トップ30の講義を提供することは不可能です。

もう一つの重要な焦点は、学生が自由に専攻を選べるような、プログラム全体に高い柔軟性を与えることです。例えば、MBAであれば、オペレーションや金融、マーケティング分析を専攻してもよいですし、小売サービスなどの業界やセクターに特化したコースを選択することもできるという具合です。金融修士号であれば、計量ファイナンスおよびトレーディング、金融および金融革新(FinTech)の国際修士科目といった新科目を数多く用意しています。このようにSMUのカリキュラムは、コンピュータを組み立てるのと同様、「自分でコースを組み立ててください」というものです。私たちは必修科目というIntelチップを手渡しますが、その上で皆さんが専攻科目や選択科目を自由に組み立ててよいのです。

さらに今後、SMUのカリキュラムはグローバルに影響を及ぼす事柄だけでなく、よりアジアに焦点を当てることもしていきます。学生が将来、アジアについての深い理解と共に国際的な舞台で活躍できるように手助けします。例えば、かつて教授内容はすべてハーバード・ビジネススクールで使われている事例を使用していました。しかし5年前から、SMUはアジアを基盤とした事例研究を進めており、現在では200件近い事例を蓄積しています。

SMUではこれらの事例を段階的に導入していき、2020年にはカリキュラム全般に行き渡る予定です。

―楽しみですね。最後に、SMUへの入学を検討している人、あるいは日本のスタートアップ・エコシステムに関係する皆さんに、SMUの方向性として知ってもらいたい点があれば、お願いします。

私がキャッチフレーズとして言っているのは「SMUは2020年までにアジアのトップ・ビジネススクールを目指す」というものです。アジアのトップ・ビジネススクールになるためには、産業界を取り巻く問題に取り組む必要があります。常に産業界との関連を保ち、最先端の情報を得る必要があります。また、アジア地域が抱える課題や大きな機会を捉え、活用する必要があります。加えて、SMUの教授陣と学生は共にグローバルな視点を持ちながら、アジア地域の事情を理解することが必要になるでしょう。 

pagetop