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Panel discussion
『ISHIN STARTUP SUMMIT 2020』Panel discussion #3

コロナで爆発的に伸びたスタートアップも…不可逆的に続く変化なのかどうか見極めを

2020年9月8日、Ishin Summit2020でパネルディスカッション「VC視点からみたwithコロナのスタートアップの変化(東南アジア・インド編)」が開催された。コロナで投資先への影響は出ているのか。ベンチャーキャピタルの視点から、シンガポールを拠点にするSpiral Ventures CEO & Managing Partner堀口 雄二氏、インド在住のIncubate Fund India Founder & General Partner村上 矢氏に話を聞いた。

[スピーカー]
Spiral Ventures
CEO & Managing Partner
堀口 雄二

Incubate Fund India
Founder & General Partner
村上 矢

[モデレーター]
IshinGroup
松浦 道生

新型コロナウイルスはカタリスト的役割となった

松浦:COVID-19によりまだ海外の渡航制限がある中で、VCの方々にWithコロナのリアルを伺っていきたいと思います。まずは自己紹介をお願いいたします。

堀口:リクルートで財務、新規事業開発等をして、その後IMJでCFOを勤め、IMJインベストメントパートナーズを設立しました。2011年以降、東南アジアにチャンスが多いと感じ、2013年からシンガポールに移り、ベンチャー投資をしています。

村上:今年10周年を迎えたIncubate Fundは、もともと日本のみで投資を行なっていましたが、数年前に東南アジアでの投資を開始し、インドへは2016年の後半に進出しました。インドではこれまで15社に投資をしています。投資責任者が現地に住み、ローカルに入り込んで、まだアイデア段階の会社やプロダクトローンチ直後の会社へ投資して、ハンズオンで支援していくという形でやっています。隠れたミッションとしては、日本の大手企業や投資家とインドのスタートアップエコシステムの橋渡しをしてくことを意識しており、様々な形でサポートしてきました。私自身は2014年からインド在住で、2016年にファンドを設立することになりました。インドに実際に住んで投資している日本人は数えるほどかと思います。

松浦:Withコロナによる変化をお伺いできますか。

堀口:投資先がどのような影響を受けているかを、移動制限の影響とユーザーやクライアントの行動様式の変化を4象限で分けて見ています。Eコマースやゲームなどのコンテンツプレイヤーに決済を提供する企業、医師同士やMRとのコミュニケーションツール、教育SaaSなどは巣ごもり効果等で爆発的な成長をしています。

音声認識のミドルウェアを提供する企業など、あまり移動制限の影響がなく行動様式の変容が追い風になる企業は順調に右肩上りに伸びています。4~5月にコロナで落ちたものの6~7月には持ち直しているのが、国際物流のマッチング、オンライン診療や薬のデリバリーサービスなどの企業です。

残念ながら影響からまだ立ち直っていない企業もありますが、たとえばメディカルツーリズムは国境閉鎖等で非常に厳しくなったものの、病院経営が厳しくなっている中で高単価報酬のメディカルツーリズムに関心が増え、新たな病院との契約が進み始めました。国境再開後は右肩上がりになっていく期待が持てます。総じて、そこまで大きな影響はなく、コロナはむしろデジタルのスタートアップにおいてはカタリスト的な存在になったように思います。

村上:コロナがあったから何らか大きなパラダイムシフトが起こるというよりは、水面下ではコロナ前から進んでいた変化が、個人や企業の行動様式や考え方が今回のコロナにより強制的に変更させられ、他のオプションがなくなったことで一気に加速したということだと思っています。

投資先でも、例えば旅行領域の会社などは大きな影響を受けていますが、それも一過性なもので、半年後なのか2年後なのかは分かりませんがいずれ戻るはずです。旅行や出張が未来永劫なくなる訳ではないですから。このように一時的な影響・変化なのか、あるいはコロナ後も不可逆的に続く変化なのかどうかは見極めないといけないと思います。

ロックダウンで影響を意識

松浦:いつ頃からコロナの影響は感じ始めましたか。

村上:インドの場合は、実は私も苦渋の決断で今は日本に一時帰国しているのですが、それを決めたのが3月末にインド全土のロックダウンが決まったタイミングでした。その時点ではインドでは数百人しか感染者はいなかったのですが、政府が強固なロックダウンをアナウンスしたので、これはもしかしたら長引きそうだし影響は大きいだろうなと感じました。

堀口:私もやはり3月ごろですね。我々のポートフォリオについてキャッシュの問題、どうコストセーブするか、1年~1年半資金繰りを確認するなどしました。

村上:インドではトップVC複数社が連名で、コロナ感染者が出始めたかなり初期に、「このようなパンデミック下でスタートアップの創業者はどのように考え、行動すべきか」というブログポストを出したりしていました。この辺りに、インドのスタートアップ・VCエコシステムの成熟を感じました。
(ご参考:https://www.notion.so/Best-Practices-for-Founders-in-the-wake-of-COVID-19-54f0c0db17064e6f9e5dd456d9cb26de )

金融包摂(Financial Inclusion)に着目

松浦:コロナ前後も踏まえたうえで、投資先として特に注目している分野はありますか。

堀口:東南アジア、インドでは社会問題を解決していく、そこに対してデジタルでどう解決していくかに取り組む企業を支援していきたいですね。コロナであれ、そのような領域がないかを探しながらやっていきます。

その中で金融包摂(Financial Inclusion)の領域は特に研究したいと思って注目しています。まだ金融サービスにアクセスできる個人や企業が少ない中で経済的自由度を高めて、経済を活性化させたり、所得の不均衡などを解消したいという問題意識があります。

現状では、銀行口座を持てない人がまだ多く、イリーガルなものを使わざるを得ない人もいます。デジタルな信用スコアが散り積もってきていて、それをもってレンディングのセクターが立ち上がりつつあるので、市場規模が数倍になっていくという調査もあります。

日本企業にもまだ参入の余地があります。レンディングで言うと、過渡期の今は非常に高利モデルが普通ですが、将来的には先進国並みの健全化を図りたいという思いもあってインドネシア、それにフィリピン、ベトナムに強い関心があります。マイクロファイナンスだと、バングラデッシュ、ミャンマー、カンボジアなどの新興国も入ってきますね。

村上:コロナによって投資戦略を変えているわけではありませんが、例えば地方都市や農村部ではあらゆるサービスやプロダクト、例えば保険やクレジットカードなどの金融商品やECの利用がまだまだ普及していません。一方で、インドはデータ通信料金が世界で最も安い国であり、廉価なスマートフォンの急速な普及もあってインフラ的にはオンラインでサービスやプロダクトを全国的に届けることが可能になっています。それでも、Tier1都市と呼ばれる大都市圏とその他のエリアで届いているモノ・サービスに大きな差があり、そのギャップをいかに埋めるか?その最適化を図るということをやっていくスタートアップには積極的に投資したいです。このコロナ禍のロックダウンで、例えばECに関しては「外出できないので、買い物するにはその他のオプションがない」という形で、消去法的に「初めてサービスを利用する消費者」も爆発的に増えています。そうやって便利なサービスを食べず嫌いしていた潜在顧客が顕在化してきている中で、どうモノやサービスを効果的に届けるか?そこに興味があります。

日本企業は現地情報を定期的に仕入れて

松浦:渡航制限で行き来がしづらい中ではありますが、日本企業はどのような関わり方ができるでしょうか。

堀口:日本企業が出資をするとしたら、投資目的、リターンを得ることを目的にしているというよりは事業創造目的だと思います。その意味であればチャンスは大きいです。特に金融を取っていくことはとても重要です。日本とは違い、金融が取れると個人のビッグデータが取れてしまうという点があり、ライフイベントなどに合わせて様々な提案をする上で金融からエコシステムを広げていくことができると思います。

村上:インドの場合、「市場として大きいと捉えて事業進出していく」という視点と、IT人材が豊富であり人口の多さから様々なデータも集まりやすいので「R&Dの拠点として捉える」という視点があるかと思います。ただ、日本企業がゼロから事業を作り、ローカルと対峙していくいくのは相応に難易度が高いので、良い技術シーズを持っていたり、既にデータを蓄積していたりする企業に投資をしたり、提携したり、場合によっては買収したりするというのが良い方法になるのではないでしょうか。

インドは今年の4月から、中国(を含む国境を接する国)からの投資については政府の事前承認が必要になるなど、かなりやりにくくなっていて、米国もコロナで一時的に混乱しているので、同じアジアでかなりの友好関係にある日本のマネーがインドのスタートアップエコシステムを下支えするという意味でも、現在は実は進めやすい外部環境ではあると思います。

堀口:日本企業とつなぐプロセスとしては、個別の案件ありきではなく、東南アジアではこういうオポチュニティがありますとシェアして、御社ならどのようなピースが埋まれば進出できそうですかという会話を初期レベルからしていくのがいいのかなと思っています。

村上:コロナ前の1年ほどインドに関心ある日系企業が急速に増えていた感覚なのですが、「なんとなくインド凄そう。何かやらなくちゃ。」という少し漠然とした形で来られる方が多く、なかなか具体的な形では話が進みづらかったです。

インドに何を求めるか?、やりたいことをなんなのか?をある程度整理した上で、しっかりとその目的に見合う企業やキーパーソンに会っていく方が良い。そのためには前振りとして、定期的に現地にいる人間と情報交換や壁打ちをしておくことには意味があると思います。もちろん、そういった形で私たちを使っていただいても、全く構いません。

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